Fukushima50という映画タイトルの真実や実話として語られる部分がどこまで正しいのかを徹底検証。映画の内容を解説しつつ、日本人が忘れてはならない真実の物語に迫る。
映画概要 | |
タイトル | Fukushima 50 |
公開日 | 2020年3月6日 |
監督 | 若松節郎 |
原作 | 門田隆将 |
脚本 | 前川洋一 |
キャスト | 佐藤浩市(伊崎利夫) 渡辺謙(吉田昌郎) 吉岡秀隆(前田拓実) 安田成美(浅野真理) 緒形直人(野尻庄一) 火野正平(大森久夫) 平田満(平山茂) 萩原聖人(井川和夫) 吉岡里帆(伊崎遥香) 斎藤工(滝沢大) 富田靖子(伊崎智子) 佐野史郎(内閣総理大臣) 堀部圭亮(加納勝次) 小倉久寛(矢野浩太) 石井正則(工藤康明) 和田正人(本田彬) 三浦誠己(内藤慎二) 須田邦裕(山岸純) 金井勇太(宮本浩二) 増田修一朗(小宮弘之) 堀井新太(西川正輝) 邱太郎(小川昌弘) 池田努(松田宗介) 田口トモロヲ(福原和彦) 皆川猿時(樋口伸行) 小野了(佐々木明) 天野義久(望月学) 金山一彦(五十嵐則一) 金田明夫(内閣官房長官) 阿南健治(経済産業大臣) 伊藤正之(首相補佐官) 小市慢太郎(原子力安全委員会委員長) 矢島健一(原子力安全・保安院院長) 段田安則(竹丸吾郎) 篠井英介(小野寺秀樹) 前川泰之(辺見秀雄) 津嘉山正種(伊崎敬造) 中村ゆり(前田かな) ダンカン(福島民友新聞記者) 泉谷しげる(松永) ダニエル・カール(ジョニー) |
オフィシャルサイト | https://www.fukushima50.jp/ |
東日本大震災で発生した実際の被害
東日本大震災は2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震での津波や、福島第一原子力発電所の事故を引き起こした災害の事を言います。この大震災の人的被害は膨大で、死者1万5899名、行方不明者2529名、負傷者数6157名という悲惨な結果をもたらしました。
被害者の半分以上は宮城県の方々で、次いで岩手県となっています。
まさに映画のタイトルにも含まれている『福島』の死者数ですが、実は岩手県の次。
被害状況だけを見ると宮城県が最も犠牲者を出したという事になりますが、原子力発電所のメルトダウン(炉心溶融)の発生により、世間では『福島県』が被災地として有名になっています。
多くの人が命を落としてしまった死因は?
この大震災で帰らぬ人となった死因は9割が津波による溺死となっています。
数にすると1万4308人です。
年代別に調べてみると、40歳以上の方が1万3084名なので、死者の多くは高齢者となっていますね。
尚、建物倒壊などによる圧死や損傷死は667名と公表されていますが、そもそも津波が建物の崩壊を招いているので、実質多くの命を奪った災害は津波だという事が分かります。
ちなみにFukushima50(フクシマフィフティ)は津波の映画ではありません。福島第一原子力発電所にスポットを充てた映画となっています。一人ひとりの演技が素晴らしく、もはや全員主人公と言えるほどの素晴らしい映画です。
ということで映画の内容を詳しく説明していきますね。
※これより下は映画内容の解説!ネタバレを含みます。
現場の職員たちの信頼関係に涙
2011年3月14日午後14時46分東北で大きな地震が起きた。
そう。日本でも阪神淡路大震災程の地震が起きてしまいました。 福島県沖に作られていた東電の原子力発電所に大きな津波が押し寄せて、原子力建屋にも津波が侵入。 地震で非常電源に切り替わっていたが、電源装置が津波でやられたため、非常用も切れてしまい建屋は真っ暗に!
原子炉の状況を確認するためにも建屋に入る必要がある。被曝のリスクがあるが現場の社員たちは準備をして見に行くことに! 結果、圧力は徐々に上がっており、このままだと原子炉の気圧は上がり、放射能が外に漏れ出して爆発する恐れがありました。
決死の決断
中央制御室で当直長として働く伊崎(佐藤浩市)は被曝の恐れがある危険性がある中、作業に向かわせるメンバーを決める必要がありました。 しかし、だれも手を挙げませんでした。しかし、伊崎が「自分が行くからだれかついてきてくれ。」というと、 部下の一人が、「僕らが行きますんで、直長はここで指示をお願いします。」といい、メンバーが決められました。 このシーンは伊崎と部下たちの信頼関係に涙が出ました。危険とわかっていながら皆が自分から志願するこのシーンはこみあげてくるものがありましたね。
危険の中での皆の思いに胸打たれる
伊崎が建屋内に行くメンバーを選定。3組2人編成で、原子炉の各圧力バルブを緩めに行きます。 建屋内は放射能により汚染されつつあるので、酸素を確保して向かいました。
そして、最初のチームが帰ってきました。バルブを緩めることに成功しましたが、被曝汚染量が一回の往復でかなりの数値を出していました。 それほど建屋内には放射能がでていたのです。
2番目のチームがバルブを緩めに行った際には放射能が危険な値まででていて、 失敗に終わり戻ってきました。 2番手メンバーが「すみませんでした。ごめんなさい!」と悔しがったり、「もう一度行く。やらせろ!」と口にしたりします。体を張って、 皆の願いを託していったが、危険すぎて果たせずに戻ってきたくやしさと罪を感じてしまうのでした。
俺たちがここに残る!にシビれた!
暗闇の中何もできず死を待つ若者が不満を伊崎に伝えるが、伊崎は「俺たちがここに残り、対応しなければいけない。 俺たちが体を張ってでもお前たち若者を必ず帰すから頼む!」と、頭を下げた。
このシーンは俳優さんの人選と演技が上手すぎて、行ってきた隊員の気持ちになってしまい、歯がゆさとくやしさを感じて涙が出ました。
もちろん無事なことがなによりなのですが、それでも僕はくやしさが勝ってしまいなんとも言えず涙を流したのです。さらに、若者を必ず帰すという伊崎の現場を思う気持ちが切実でとても胸に響きました。
水素爆発が発生
決死の覚悟で1号機の圧力を緩めましたが、それでもどうにもならなくなりました。そこでベント法(内部蒸気を放出し、圧力を降下させる調整方法)を行うことにしましたが、 現場の準備や環境要因によってベントを行うことが遅くなってしまった。
ついに、ベントを行ったが1号機内に水素がでていて、結合し、水素爆発が起こりました。
そしてその後も3号機が爆発してしまい、中央制御室内にもガスが蔓延してマスクと保護着なしではいられなかった。ここで若い人たちは緊急対策室に戻り、ベテランが中で見ることになります。
応援で駆け付けていた5号機、6号機当直長の前田(吉岡秀隆)が現場のみんなの写真を撮ります。 写真のシーンは自分たちがここで死ぬのではないかと感じつつあるシーンの一つですね。いくつかそういったシーンはあるのですが、 ここが一番初めだと思いますね。明るく振舞おうと頑張る前田の気持ちは見ているこっちまで同じ気持ちにさせます。
死を覚悟し始めた瞬間
写真を撮り終えた後、3号機のほうでも爆発が起きました。危険がどんどん高くなるので、ここから交代制になります。 伊崎が緊急対策室に呼ばれて戻りますが、次の交代の際、前田が電話を取り、「戻ってこなくていいです。」 と、涙を流しながらいう。
しかし、伊崎は戻り、前田の前に現れました。前田の人間性といいますか、皆を元気づけるシーンでみんな笑ってたりしますが、裏では死にたくないという気持ちがすこしでもあったんだと思います。それを少しでも考えないためだったのかなと思ったりしました。後半はかなり厳しい状況下でそれでも戦う彼らに涙が止まらなくなります。
家族への連絡
3号機爆発後、4号機が水素爆発し、吉田が緊急避難命令を出します。 残る者、帰る者、それぞれ決断し、最終的に50名ほどが残りました。 残っている人々は家族にメールを送ります。まるで最後のメッセージのように。
伊崎も家族にメッセージを残します。しかし、娘の遥(吉岡里帆)は伊崎のメールに絵文字が書いてあり、その絵文字からお父さんの何かしらの覚悟を察し、「顔見て謝るまで許さない!!」と返信しました。簡単にまとめましたが、皆のもう家族に会えない可能性があるという状況でのメッセージは心に来ますね。
前田もメッセージを残した後に廊下で泣くシーンがありますが、自分の気持ちがあふれてしまい泣き出しているのが苦しくなります。
それほどこのシーンは泣けるポイントでした。
ラストシーンのネタバレ
2号機の圧力も危ないという状況でしたが、たまたま建屋の壁に穴が開いていて、そこから放射能が漏れていたため、 圧力が下がり始めました。そのため、爆発は起きず、緊急対策室の皆も喜びを感じていました。
その後、伊崎と前田は家族のもとへ帰りました。
伊崎と前田は家族と強く抱き合いました。しかし、伊崎は「住めない町にしてしまい申し訳ございませんでした。」と町の人々に謝ります。しかし、避難住民の松永(泉谷しげる)は「利夫ちゃんは一生懸命やった!」と励ましの言葉をかけました。そして、利夫の父が現れて、「よく無事でもどってきたなぁ」と涙をながしました。
時が過ぎ2014年。伊崎は街に戻ってきました。そこには桜がしっかり咲いていて自然が芽吹いていました。吉田の遺書をもって。吉田は2013年に命を落としてしまうのです。しかし、吉田とともに戦った伊崎は思いを馳せ、福島の海が見える町にカメラが移動してこの映画は終わりました。
ラストの感想
2011年だった本編から2014年に切り替わったシーンは、福島があの災害以降、自然やかつては当たり前だった生活が戻りつつあるという印象を受けました。特に伊崎が桜並木の途中であの事故での戦いの思い出に馳せるシーンは胸にしみました。涙が止まらなかったです。
吉田もあの事故から2年後食道がんで死んでしまいます。しかし、吉田、伊崎、前田含めて50人の東電の現場職員の方々が戦ってくれたからこそ今があり、こういった戦いがあったということを残していかなければならないと改めて感じました。
ラストはすべてを見たからこそのシーンで、すべてが詰まっていると感じました。